FXに特定口座はない。1,000通貨でも取引記録ノートの1行が申告の数字になる
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株の口座には「特定口座」があって、証券会社が税金を計算し、源泉徴収まで済ませてくれる。FXの口座には、この仕組みがない。国税庁の説明では、FXの利益は「先物取引に係る雑所得等」という別の区分に入り、特定口座が扱うのは上場株式等の譲渡のほうだからだ。だからFXは、利益が出た年に自分で計算して申告する前提で続けることになる。1,000通貨の小さな取引でも、それは同じだった。この記事では、FXの税の区分を国税庁の原文で確かめ、取引記録ノートの1行がどこで申告の数字につながるかを並べた。
FXの利益が入る「先物取引に係る雑所得等」

国税庁のタックスアンサーNo.1521は、FXの課税を2つの場合に分けて書いている。金融商品取引法上の「市場デリバティブ取引」または「店頭デリバティブ取引」にあたるFXの差金等決済で利益が出た場合、他の所得と区分して「先物取引に係る雑所得等」として申告分離課税になる。国内の登録業者との取引は、ここに入る。
差金等決済というのは、決済、行使、放棄、譲渡をまとめた言葉だ。1,000通貨を買って、あとで売って閉じる。この「閉じた」ところで損益が確定し、その合計が1年分の所得になる。持ったままの含み益や含み損は、まだ数えない。
No.1521には、もう一方の場合も書かれている。市場デリバティブ取引にも店頭デリバティブ取引にもあたらない取引の損益は、一般的には雑所得として総合課税になり、申告分離の「先物取引に係る雑所得等」とは損益の通算もできない。海外の無登録業者との取引を考えている人は、この一文を先に読んでおくといい。
特定口座が扱うのは、上場株式等の譲渡
国税庁のNo.1476によると、特定口座は、金融商品取引業者等に開設した口座の中の上場株式等の譲渡による所得を、他の譲渡と区分して計算する仕組みだ。計算は業者が行い、「特定口座年間取引報告書」で簡便に申告できる。源泉徴収を選んだ口座なら、譲渡益に15.315%(他に住民税5%)がその都度源泉徴収され、申告不要にもできる。
FXの損益は、この「上場株式等の譲渡による所得」とは区分が違う。だから、株の口座のように業者が税金を差し引いてくれて終わり、という形にはならない。FXの損益の明細を見ても、株の源泉徴収ありの口座のような税額の欄は出てこない。
| 比べるところ | 株の特定口座(源泉徴収あり) | FX |
|---|---|---|
| 所得の区分 | 上場株式等の譲渡所得等 | 先物取引に係る雑所得等 |
| 税金の計算 | 業者が行う | 自分で行う |
| 源泉徴収 | 譲渡のたびに15.315%(他に住民税5%) | なし |
| 損益通算できる相手 | 上場株式等の配当所得等など | 他の先物取引に係る雑所得等だけ |
税率は15%と5%、それに復興特別所得税

No.1521に書かれている税率は、所得税15%、他に地方税5%だ。これに、平成25年から令和29年までの各年分は、基準所得税額の2.1%の復興特別所得税を併せて申告・納付する、と注記がある。
さらに、令和9年(2027年)1月1日以後に生ずる所得については、復興特別所得税の税率が1.1%に引き下げられ、防衛特別所得税(源泉徴収すべき所得税の額の1%相当額)が併せて源泉徴収される、という一文も加わっていた。2026年の取引と2027年の取引で、所得税に上乗せされる部分の名前と内訳が変わることになる。年をまたいで記録をつけるなら、年の区切りで1本線を引いておくと、あとで見返しやすい。
1,000通貨の1年を、仮の数字で計算する
ここからは仮の数字で計算する。1,000通貨のドル円は、1円の値動きで1,000円。1年間に24回の決済をして、利益が出た決済の合計が3万円、損が出た決済の合計が1万8,000円だったとする。
- 1年間の差引 = 30,000円 − 18,000円 = 12,000円
- 所得税 = 12,000円 × 15% = 1,800円
- 復興特別所得税 = 1,800円 × 2.1% = 37.8円
- 住民税 = 12,000円 × 5% = 600円
合計で2,400円ほど。実際の申告では端数の処理や、申告が必要かどうかの条件が加わるので、この数字はあくまで桁をつかむための目安だ。
大事なのは、計算の出発点が「利益が出た決済の合計」と「損が出た決済の合計」の2つだという点だった。24回の決済を1回ずつ足し引きできる記録がないと、この2つはどこからも出てこない。業者の画面で年間の損益を見ることはできても、自分で1回ずつ確かめられる形で持っておくほうが、私は落ち着く。
損が出た年に、記録が効いてくる

利益の年より、損の年のほうが記録の出番は多い。No.1521によると、FXの差損は他の「先物取引に係る雑所得等」とは損益通算できるが、それ以外の所得とは通算できない。引ききれない損は、一定の要件のもとで翌年以後3年内の「先物取引に係る雑所得等」から控除できる。
その要件を書いているのがNo.1523だ。損が出た年分の確定申告書に「申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)」と「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」を添付して出し、その後も連続して付表を添付した申告書を出す。繰り越した損が2つ以上の年に生じていれば、最も古い年分の損から順に差し引く、とも書かれている。
つまり、損が出た年こそ申告書を出す側に回る。1,000通貨の損は数千円のことも多いけれど、翌年の利益と相殺できるかどうかは、その年に計算明細書を書けるだけの記録があるかで決まる。
ノートの1行に、何を書いておくか
私のノートは、取引のたびに1行。日付、買ったか売ったか、入った値段、出た値段、数量、そのときの維持率の6つを書いてきた。申告の計算のために、この1行から引き出したい数字は次のとおりだ。
| ノートの欄 | そこから出す数字 | 申告で使う場面 |
|---|---|---|
| 日付(決済した日) | どの年分の損益か | 年の区切り・繰越の年の数え方 |
| 入った値段・出た値段・数量 | 1回ごとの損益(1円で1,000円) | 利益の合計と損の合計 |
| 買い・売り | 損益の符号の確かめ | 計算の取り違えの防止 |
| 維持率 | (税には使わない) | 持ちすぎの振り返り |
維持率の欄は、税金には関係しない。ただ、前の記事で書いたとおり、維持率が500%を切っていた時期ほど負けた取引が続いていた。税のための欄と、続けるための欄を、同じ1行に並べているのがこのノートの形だ。
ひとつ気をつけているのは、日付を「入った日」ではなく「出た日」で数えることだ。12月に買って1月に売った取引は、損益が確定したのが1月なので、翌年分になる。決済で確定した損益が所得になる、というNo.1521の建てつけに合わせると、そう数えるのが自然だった。
業者の報告書と、自分の記録を突き合わせる

業者によっては、1年分の取引をまとめた報告書を出している。私は年が明けたら、口座で見られる年間の損益と、自分のノートの合計を並べている。ずれがあれば、どちらかで1行の書き漏れか、スワップポイントなど別の項目の扱いの違いがある。ずれの理由を探すのは手間だけれど、申告書に書く数字を自分で説明できる状態にしておきたい。
1,000通貨は、1回の損益が小さい。小さいぶん、記録をつけなくても困らないように見える。けれど年に24回決済すれば、1年で24行になる。行が積み上がるほど、記録のない年は何も説明できなくなる。ノートは利益を増やす道具ではなく、自分の取引を自分の言葉で申告できるようにする道具だと思って続けている。
申告が必要かどうか、どの書類を使うかは、収入の形によって変わる。最終的には国税庁の確定申告の案内か、税務署で確かめてほしい。
- 国税庁 タックスアンサーNo.1521「外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1521.htm
- 国税庁 タックスアンサーNo.1476「特定口座制度」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1476.htm
- 国税庁 タックスアンサーNo.1523「先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1523.htm